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いろいろな皮膚病

アトピー性皮膚炎

「アトピー」の意味

 人間の体には、外から必要のない物が入ってくると、それを排除しようとする反応が起こります。このような人間に本来ある力は人間が生きていくために必要なものです。
 しかし、時に、人間の体に不利益をもたらすような過剰な反応が起こることがあります。このような反応のことをアレルギーといいます。このようなアレルギーによる病気には、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、食物アレルギーなどがあります。 このような病気に対して1923年Cocaという方がアトピーと名づけました。アトピーという言葉はギリシャ語で不思議な、異常な、不合理なといった意味を持っています。その後1935年Hill&Sulzbergerという方が喘息などを合併しやすい特異的皮疹を持った湿疹を「アトピー性皮膚炎」と名づけました。
 このような経過で現在「アトピー」、「アトピー性皮膚炎」という言葉が広くつかわれています。歴史的には紀元前のローマ帝国のAugustusもこの病気に罹患していたのではないかとの記録もあります。


アトピー性皮膚炎の定義

 皮膚がカサカサして、かゆがっているお子さんと一緒に皮膚科の外来を受診し、「この子はアトピー性皮膚炎ではないでしょうか。」と心配しておられる親御さんが多くみうけられます。
 皮膚がカサカサしてかゆい皮膚科の病気には、皮脂欠乏性湿疹、接触皮膚炎(「かぶれ」のことです)など多くの疾患があります。 しかし、今アトピー性皮膚炎のことがマスコミ等でとりあげられる機会も多くあり、多くの方がアトピー性皮膚炎という言葉に接する機会が多いためにこのような心配をして外来を受診される方が多くなっていると考えています。
 私達皮膚科医がアトピー性皮膚炎の診断を行うときには、日本皮膚科学会が示しているアトピー性皮膚炎の定義に基づいて診断を行っています。そこでは、アトピー性皮膚炎は次のように定義されています。

アトピー性皮膚炎の定義(概念)
「アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因をもつ」
アトピー素因:①家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の疾患)、または②IgE抗体を産生しやすい素因

このような疾患であることを念頭におきながら同じく日本皮膚科学会が示しているアトピー性皮膚炎の診断基準と照らし合わせながら私達は診断をしていきます。


乳児期の症状

 生後4,5ヶ月経ったころから、口の周りを中心に赤いブツブツができ、それが首やほほに広がっていくような皮膚の状態がこの時期の特徴的なアトピー性皮膚炎の症状です。

 このような皮膚の状態がその後おなかや背中にも広がっていきます。またこの時期の特徴として、ブツブツが集まって少し湿潤(じゅくじゅくした状態)した局面を形成していることもあります。

 しかし、顔やおなか、お尻に赤いブツブツができているからといって、すべてアトピー性皮膚炎とは限りません。乳児の場合、よだれによって口の周りやほほの皮膚が荒れて赤くなっていることもありますし、また、おなかや腰のところに赤い皮疹があってもオムツかぶれのこともあります。逆にアトピー性皮膚炎では、オムツを着用しているところは皮膚が保護されるためにきれいな皮膚を保っていることが多いです。


幼児期や学童期の症状

 この時期のアトピー性皮膚炎の患者さんには、乳児期から症状が続いている患者さんと、この時期にはじめて発症した患者さんがいます。

 乳児期から症状が続いている患者さんでは、体幹、四肢、顔などに少しふくらんだ様でじゅくじゅくしている赤い皮疹ができるのが特徴です。また、かゆみのため、掻破行動が起き、体のいたるところに、皮膚がむけた状態(「びらん」といいます)やそこに「かさぶた」をつけた状態の皮膚になります。

 この時期に発症した患者さんでは、どちらかというと皮膚は乾燥してざらざらした状態をしめしており、症状は、首、肘、膝のうら、手首などに多く、症状がみられる部位が限られているのが特徴です。 また患者さんによっては、掻破行動が続くと、その部位の皮膚がすこし硬く盛り上がった様になることもあります。このような状態の皮膚のことを苔癬化局面(たいせんかきょくめん)といいます。


成人期の症状

 基本的には成人期のアトピー性皮膚炎の症状は、幼児期、学童期の患者さんの症状と同じです。この時期における患者さんの症状の特徴としていくつかの点があります。

 ①経過が長く続いているために皮膚が硬くなり盛り上がった状態になることがあります。個々の皮疹が硬く大型となって痒疹と呼ばれる皮疹になったり、首の周りの皮膚が厚くなり波打ったようになったりすることもあります。 > ②皮疹が上半身(首、胸など)に強くでることが多い,といったことがあります。

 特に②の特徴のうち、顔面に皮疹が強く出現し、思春期、成人期の患者さんの中にはその為に社会活動に積極的に参加できなくなる患者さんもいます。また症状が悪化し、皮疹が全身に広がり全身の皮膚が赤くなり、紅皮症と呼ばれる皮疹の状態になることもあります。


皮膚の合併症

 アトピー性皮膚炎に合併しやすい皮膚疾患の合併症としては、皮膚への細菌やウイルスの感染症があります。主なものとしては、伝染性膿痂疹、伝染性軟属腫、カポジ水痘様発疹症などがあります。

  1. 伝染性膿痂疹
     一般的にはとびひと言われます。黄色ブドウ球菌などの細菌が皮膚に感染した病気です。掻破などにより生じた皮膚のびらん面に細菌が感染しておこります。治療方法としては、抗生物質の内服、抗菌作用のある外用剤の塗布などの方法で治療します。

  2. 伝染性軟属腫
     一般的には水いぼと言われます。ウイルスの感染により起こります。皮膚に半球状で中心に点があるような小さな水ぶくれのようなものができます。治療方法はピンセットでつまんで取ります。

  3. カポジ水痘様発疹症
     皮膚への単純ヘルペスというウイルスの感染により引き起こされます。じゅくじゅくした皮膚面にウイルスが感染し、ちいさな水庖を作ります。治療方法は抗ウイルス剤の投与が必要になります。症状が重く、ぶつぶつが全身に広がっているような場合には入院のうえ治療することが必要になることもあります。


目の合併症

 アトピー性皮膚炎に合併する目の病気としては、アレルギー性結膜炎、網膜剥離、白内障があります。

 アレルギー性結膜炎では眼脂、かゆみが症状としてあります。白内障は目のレンズの部分がにごり、見えにくくなる病気です。もともと高齢の方に多い病気ですが、アトピー性皮膚炎が長く続いている患者さんで認められることがあります。

 網膜剥離は、外からの光を感じて物を認識する目の奥にある網膜がはがれてしまい、最悪の場合には失明にもつながる病気です。顔の症状が強い患者さんで、顔を強く掻破したり、たたいたりしていると、網膜剥離になってしまうと言われています。
以前はこれらの合併症はステロイド外用剤の副作用によるものだという意見もありましたが、現在は否定的です。これらの合併症につきましては、眼科医師によるきちんとした検査を受け、症状が出現したときには的確に対処してもらうことが必要です。

 本院では、眼科医師と連絡を取りながらアトピー性皮膚炎の患者さんで症状が強い患者さんにつきましては定期的に検査を行ってもらっています。検査を希望される方は皮膚科、もしくは眼科を受診し相談してみて下さい。


治療の目標

 この質問に対する答えは大変難しいと思います。治療を担当する医師、個々の患者さんの症状によってそれぞれ違ってくると思います。私が日常診療で考えていることをお話いたします。
 アトピー性皮膚炎を含め、すべての病気の治療目標は、根本的に病気を治すということだと思います。しかし、残念ながら現在の医学ではすべての病気を完全に治すことはできません。 例えば、高血圧の患者さんは血圧を下げる飲み薬を飲みますが、この治療も高血圧を根本的に治す薬を飲んでいるわけではなく、薬によって対症的に血圧を下げているのです。対症的な治療方法だからといってこのような治療法が誤った方法とは思いません。このような方法によって血圧を適正な値に維持することにより合併症を防ぐことができます。
 アトピー性皮膚炎の治療の目標もこの例に似たところがあると考えています。現時点でアトピー性皮膚炎に対する根本的治療となる方法はありません。アトピー性皮膚炎では、臨床症状が良好な状態で、日常生活に支障なく、合併症を起こさないように生活できることを第一の目標に置いて治療していくのが良いのではないかと考えています。そのための方法として、外用剤、内服薬を用いますが、それ以上に患者さん自身が日常生活で自分の皮膚を痛めつけるような生活をしていないかということを考えてみることも大切だと思います。


「ステロイド」とは

 ステロイドと一般的に呼ばれている薬は、正式には副腎皮質ステロイドホルモンと呼ばれるものです。この物質は腎臓の上にある副腎という臓器で作られています。この物質を薬剤として使えるように合成したものがステロイドと言われる薬剤です。
 この薬は体の中の炎症を抑える働きがあり、多くの疾患の治療薬として使われています。このステロイド剤には、その薬の形として、内服薬・注射薬・外用剤というものがあります。これらのうち、アトピー性皮膚炎の治療のために使われることが多いのは外用剤の形の薬剤で、皮膚で起こっている炎症を抑えて、皮膚の状態を良くするためにおもに使われます。
 ステロイド剤にも、他の薬剤と同様に副作用があります。ステロイド剤の副作用について考えるときに大切なことは、内服・注射のステロイド剤の副作用外用のステロイド剤の副作用は分けて考えなくてはいけないということです。
 ステロイド外用剤の副作用については日本皮膚科学会が示している文章を載せます。

「ステロイド外用剤を適切に使用すれば、副腎不全、糖尿病、ムーンフェイスなどの内服剤で見られる全身的副作用は起こり得ない。局所的副作用のうち、ステロイドざ瘡、ステロイド潮紅、皮膚萎縮、多毛、細菌・真菌・ウイルス皮膚感染症などは時に生じうるが、中止あるいは適切な処置により回復する。ステロイド抵抗性(連用による効果の減弱)の事象も通常の使用では経験されない。ステロイド外用剤の使用後に色素沈着が見られることがあるが、皮膚炎の鎮静後の色素沈着であり、ステロイド外用剤によるものではない。まれにステロイド外用剤によるアレルギー性接触皮膚炎が生じる。」

 つまり、色々なメディアを通じて知れわたっている副作用についての情報は、内服薬の副作用と外用剤の副作用を混ぜてしまっているために多くの患者さんが不安をいだくようになってしまったのではないかと考えています。ただし、ステロイド外用剤がまったく無害で何の心配もなく使えるという薬剤ではありませんので診察を受けている医師とよく相談しながら適切な外用剤を使用していくことが一番大切なことだと考えています。


日常生活の注意点

  1. 入浴時に体を洗いすぎない。あまり洗いすぎると、皮膚がカサカサになります。
  2. 皮膚についた汚れはシャワーなどで落とす。
  3. かゆみがでてもきても、むやみにかかず、外用剤等によりかゆみを抑えるようにする。
  4. 極端に不規則な生活はしないようにする。
  5. 皮膚がカサカサのときは保湿剤を用いるようにする。


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